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東京高等裁判所 昭和44年(ネ)1477号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人は控訴人に対し別紙目録記載の不動産につき、東京法務局八王子支局昭和三三年一二月一二日受付第一二八九六号抵当権設定登記および同支局昭和三四年四月二一日受付第四八九七号抵当権変更の付記登記の各抹消登記手続をせよ。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張ならびに証拠の関係は、控訴代理人において当審証人番場ヨシノの証言を援用したほかは、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

理由

当裁判所は、当審における証拠調の結果を斟酌しても、控訴人の本訴請求を理由なきものと判断する。その理由は、左記を付加するほか、原判決の理由と同一であるから、その記載を引用する。

時効を援用し得る当事者は、時効により直接に利益を受けるべきもの、すなわち取得時効により権利を取得し、または消滅時効により義務を免れる者に限られ、抵当不動産の第三取得者は、抵当債権の消滅に伴ない抵当権が消滅する結果その所有権が安固となる利益を受けるが、その利益は債権消滅の時効の直接の効果ではないから、時効を援用し得る当事者には該当しないものと解すべきである(大審院明治四三年一月二五日判決、民録一六輯二二頁参照)。

そうすると原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却すべく、控訴費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

別紙目録(第一審判決の別紙目録と同一につき省略)

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